【キャリアとは越境】Vol.3 越境力を育てるために
2023.03.14
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インターン生 ひなた
「キャリアは自分でどこまでやるか・これまでと違う環境で自身を試せるかどうか。キャリアカウンセリングも今のままで良いと褒めるだけ・共感するだけではだめで、どこかでチャレンジさせなければならない。そういう意味ではカウンセラーは人の越境力を育てることも大切。」
こう話していたのは、長く幅広い企業での経験を経て、現在はキャリア支援家・高校の社会科講師として多くの学生や社会人に教育の機会を与え続ける「武居 秀俊」さん。(講師紹介ページはこちら)
武居さん、武居さんが以前ベトナム旅行で知り合った大学生の”好生さん”、インターン生の”陽向(ひなた)”の3人で食事に行った際に話していた内容から、今回の対談企画がスタートしました。
今回のテーマは「越境」
国境を超えることだけが越境ではありません。いつもと違う環境に行くことも、初めてのことに挑戦することも、失敗することも、一歩踏み出していれば全て越境です。
大学生である好生さんとインターン生陽向は、どちらも海外渡航などの越境体験を経験しており、学生こそ「越境する=自分の家を出て違う環境に行く」ことが大切だと身をもって感じています。
武居さんの「キャリアの観点からの越境の重要性」に大学生2人の「学生目線での越境体験の大切さ」を交えながら、幅広く越境について語り合っています✨
キャリア支援者・講師・学生・キャリアを築く全ての方に共通し、ぜひ読んでいただきたい内容です。(Vol.2「いつの間にか越境していた」 はこちら)
キャリアカウンセラーが人を越境させるためにできることとは?
陽向:私がキャリアフラッグでキャリアカウンセラーの方々の話を聞いて、いつも思うのは、親でもなく先生でもないっていう存在、第三の存在が学生の話を聞いたり、何か刺激を与えたりすることはすごく大事だなと思っています。その上で、キャリアカウンセラーの方々が目の前の学生一歩越境させるためにできることって何でしょうか?
武居:確かに。ストロングタイズの関係の人とだけ話してても行き詰まっちゃうので、ウィークタイズな人(無関係の人)と話をすることも大事です。例えば塾や野球のチームとか何か別の環境を持っていると比較的リスクに対しては強くなる。ここだけ、という一つの場所で生きているとリスクチャレンジはしにくいですよね。ポートフォリオというか、ストレスを分散できる場所があると、ここでは挫折したけどこの習い事で趣味ができた、みたいなチャレンジはしやすくなる。これも学びになっていきますね。
好生:それはもちろん小中学生の多感な時も有効ですし、大学生ぐらいでもそういう考え方は有効ですよね?
武居:もちろん。だからボランティアとか課外活動でバランスを取るっていうことはすごく良くて、逆に1本足打法はすごく危険なので、別の趣味を持ったり活動があるといろんなこと話しやすくなるし、芸は身を助けてくれるかと。ある意味では仕事はストレスとの戦いでもある訳で、本業と違う場所を持っているのは発想の打ち手を増やせる効果が期待できる。しなやかな対応をしやすくなるよね。
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武居:カウンセリングの観点で言うと、これは異論反論あるとは思うのですが適度な強制やきっかけ作りのポイントが必要だと思っていて、受容や共感とともに、アクションした結果を問われるというか変化を問われる関係性も大事だと思っていて。基本、普通のカウンセリングは同意・賛同しながら相手を主体に聞いていくから、強制力とかは出しにくい。カウンセリングって手法として持っていく必要もあるしケアをしていくためには有効なんだけど、それで消費者で居続けるというか、お客さんであり続けてしまうのが懸念点だと思うんだ。
陽向:確かに、、存在としては必要ですよね?
武居:存在肯定としてのカウンセリングやカウンセリングマインドは必要だよね、カウンセリングで穏やかに話を聞けるっていうのは、本当に有効なんだけど、話を聞ける人は同時に相手に対して強くリクエストを出せることが重要なんだと思うんだ。でないと、単なる癒しの場になっちゃう。社会的には大事だけど、日本中の教員・カウンセラーがみんな養護の先生みたいになっても違うでしょう。どこかにハードにやる場所がある中で、別のコーチングとして高い目標を目指すために「これをしようね」って言える感じだと良いと思っていて。何も成し遂げてない状態で、実際大変なこともあったりするんだけども「大変でしたね」って癒やしてあげるだけじゃ足りない。それを聞く人が必要なんだけど、本当にクライアントたちのためになっているのか?っていうのはすごく思ってて。この辺のバランス感覚はすべてのカウンセラーが持っていると思うのだけども、ぜひ陽向さんにいろんな人に聞いてみてほしい笑
陽向:分かりました笑
▲キャリアフラッグ第12期総会時の様子
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働く時こそ旅のように越境せよ。
武居:好生くんと出会ったベトナムでも感じたんだけど、今の日本の情勢は環境問題とかに対してすごく視点が高まってきているのはいいけど、その影響かやっぱりキャリアを築く、チャレンジするっていうのはちょっと大変なのかなと。
武居:うちのムスメが衝撃を受けていたんだけど、良いかどうかは別にして、かの地ではクラクションはすさまじいし、バスの運転手がいきなりペットボトル窓から投げ捨てたりしてたんだよね。おいおいおい、あぶねーじゃん、と思うけど、ある意味小さなことは気にせずに、のびのびとして生活をしているとも言える。人間慣れるもので、クラクションなんかは途中から気にならなくなるんだけど、あの環境にいると小さなことは気にせず、チャレンジはしやすくなる印象は持ったよ。
陽向:キャリアも越境と言えますか?
武居:そうだね。色んな立場の違いを超えていけると価値が高いし、成功しやすいよね。例えば社長や経営陣と社員は全然違う生きものだったりするよね。社長は労働組合がないので、特に創業社長は死ぬほど働かなきゃいけないというのはあるかもね。遠慮する世界じゃなくなるから、ちゃんと休むけど事業が最優先の中でやっていく。その世界で生きる人と8時間労働で残業したら手当てが出る保護される対象の労働者というのは、全然違う生き方・考え方を持ってますよね。
陽向:はい。
武居:だからこそ、越境できる人やそこに橋をかけられる人は価値が高いとも言える。これはテレビで有名な予備校講師さんが言っていたんだけど、例えば、忙しいことを経験したことがない人って、忙しい人の気持ちは絶対わからない。「忙しい」という単語を解像度高く理解できないんだ。きっと埋まらない差がある。だから体験機会が大切で、趣味やスポーツなんかで何か自分を鍛える環境があればいいけど、それが無い場合は仕事で経験するしかない。成果が問われる、時間との勝負の機会を体験することが大切で、それはやっぱり体力が全然違うから20代のうちに鍛えないと、30代になってからだと体がついていかない、40代なんてもっと大変、ということはあるかもね。
武居:だからキャリアもちょっとずつ自分の環境から越境しながら進んでいくことが大事かも。自分で何か起こさないとうまくいかない。旅も結構そういうとこあって、ツアー旅行だったらつつがなく過ごせばいつか終わるけど、自分でプラン立てて行きたいところに行った方が面白い。どこに行くか・旅のテーマは自分で決めないとどうにもならないから、自身で責任を負えるよね。思うように行かないことも出てくるんだけど、でもそれが人生のプラスになる。
武居:今の日本の環境では、クラスを輪を乱さずにうまくやるのは勝手に学んで行きますし、なんなら世界一うまいから。笑その能力じゃなくて、何か起こしに行く力を学ぶ機会があったら良いと思いますよね。だからバックパッカー旅行とか、留学に一人で行くとか。一人で何かをする体験って貴重だよね。
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陽向:最後に、武居さんの一番最初の越境エピソードって何ですか?学生時代ですか?
武居:大学を留年したこと。
好生:浪人ではなく?
武居:留年です笑。入るのは得意なんです、出るのが苦手なんですよ。大学は6年行ったから。
陽向:そうなんですか!
武居:その6年の大学生活の中で、一応卒業旅行として友達3人と初めてタイのカオサン行きました。でもつまんないからもうバラバラに行こうぜってなって、3日目ぐらいから3人別行動して、、
好生:もう越境してますね笑
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大学が6年あったからこその出会いと経験
武居:あとはインターンシップもやってました。まだインターンシップが珍しくて一般的じゃなかったので、逆にすごい面白い人が集まってて、あるベンチャー企業で学生チームみたいな感じで一緒に営業活動してました。「とにかくこの商品を売りたいからこの5人で売ってきて」くらいの指示しかなくて、とにかく電話をかけまくったりしてね。まだインターンシップが珍しかった時代だったから、東大の留年生とかも居たりして個性的なメンバーでしたね。それが面白くて結構売り上げ上がったりだとか、色々試せる環境でした。それも単純に留年して、想定外のことが起きたことで経験できましたね。
武居:大学って地方出身の子もみんな集まってくるじゃないですか。大学時代のサークルでもずっと野球やってたけど、地方で野球やってた人は名門校出身が多いし、浪人して入ってくる人も多くて、いろんな人がいたからそれが面白かったんだよね。そこで卒業旅行とかで海外に行くようになったり。大学の時の友人の影響で刺激を受けることもたくさんありました。
陽向:大学ってそういう場所ですよね。越境してきた子たちの集まりですもんね。
陽向:教員採用試験は在学中に取りましたか?
武居:教員採用試験は結局35才になってから、社会人経験をしてから受かりました。だから民間の方が長いのです。これもぼくの体験はひどくて、民間企業に内定をもらって内定先でもインターンシップしていて売り上げ上げていて、卒業旅行でヨーロッパに2ヶ月半行って、余裕で帰ってきて、明日から新入社員研修ってときに卒業できてないって教授に言われて笑。それから就活し直した。
陽向・好生:ええ!笑
武居:気をつけてくださいね笑
好生:まずいな笑(卒業旅行で南米に渡航予定)
武居:そんなことあるわけないでしょって感じだけど、卒論は提出してるのに、卒論を書くための演習の授業を必修なのに取ってなくて、卒業できなかった。その内定もらっていた企業にも進めなくなって、もうしょうがないからそこからまた就職活動して、、
陽向・好生:ええ笑
武居:でもこれも良い体験だった。もう3回目の就職活動だから、ベテランなんだよね。同期は働き始めているし。10社ぐらい内定もらって結局一番小さい会社に入った感じです。今となっては面白いけど当時は結構大変でしたね。でもそんな感じですよ。
結局は未来って想定外だったりするので、それを自分でどこまで愉しめるかどうか。
「どこ行っても生きていけると思えるかどうか」
だと思うので、力強くいきましょ。
編集後記
この「キャリアとは越境」という記事の企画を始めてから書き終えるまでの間に、私自身も本当に越境しました。年明けに念願の中国留学が決定し、現在進行形で留学生活を送っています。一緒に対談させて頂いた大学4年生の好生さんも2月に3週間のインド放浪旅に行かれていました。武居さんの繋がりでこうして3人で集まれたのも本当に偶然だったのだなと感じています、、!こういった繋がりこそ、大切にするべき”ウィークタイズな繋がり”と言えそうですね。初対面でも3人の共通点であった「ベトナムにいったことがある」という点から話が盛り上がり、ここまで記事として形に残せたのはとてもいい経験になりました。
自分はなぜ越境できたのか、人が越境するにはどうすればいいか、”今”越境しながら感じていることは何か、などこの「越境」というキーワードからたくさんのことを頭に思い浮かべながら最近は過ごしています。
どんな出来事もきっと「これもいい経験だった」と思えるはずなので、今目の前にある選択を一歩前に!越境しながら自分を成長させる方向に持っていきたいと強く思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました!