【PBLの先にあるもの】手段としてのPBLとは

2023.08.06

INTERVIEW

AUTHOR

インターン生 あきら

昨年度、キャリアフラッグが某私立大学にて後期授業として、キャリアセンターの職員様との協働でPBLの選択授業を開講いたしました。(詳しい事例紹介はこちら

今回の対談では、

・このPBL型授業のゼロからの企画立ち上げ・運営の裏話を聞きたい!

・PBLを受けたその先にあるべき学生の姿とは?

・最近業界でホットワードのPBLってそもそもどうあるべき!?

こういった疑問を抱えたキャリアフラッグのインターン生2名が対談企画に臨みました。今回「PBLの先にあるもの」というテーマで私たちインターン生と対談をしてくださるのは、14期を迎えたキャリアフラッグの立ち上げ当初から会社を支える、マネージャーの中田順平さん。学校事業部のマネージャーとしてだけではなく、現場で授業や講座、学生の相談役などのお仕事もされています。

インターン生の疑問

あきら:まず初めに私は大学の授業でPBLを受けたことはあるのですが、それがPBLだったとは全く知らずに、後からそのことを知ったという経験があります。なんだかPBLというのが名前だけが走ってるような、また授業の内容に関しても、グループディスカッションをしていればPBLと名前を出しているような、そんな印象があるんです。そのため、PBLを経験した学生に何を伝えるべきでPBLはその先の一体何に生かされるものなのかっていうのがあまりわかっていません。PBLの理想と今ある現実にもちょっと乖離があるんじゃないかなとも少し疑問に思っているところです。

中田:なるほど。そもそものPBLっていうものが、どんなものを理想として目指してるのか、一方で実態として大学の中でいろいろPBLという名がついて行われているものが、果たして理想的なものとどのぐらい乖離があるのか、グループディスカッションと何が違うのとか、みたいな感覚があるってことですね。

あきら:そうですね。その辺りが今回話しながら紐解けてくると、その先にあるものも見えてくるのかなと思っています。

概要説明・全体感

中田:今回のPBL型授業のタイトルは「楽しく!お仕事研究プログラム」でした。「楽しく」っていうのが肝で企画立ち上げを担われていた職員様はメッセージとして、仕事は嫌々やるもの・大変そうっていうイメージを結構持ってるかもしれないけど、実は主体的に取り組んでたら楽しいこともいっぱいあるんだよ、そういう大人もいっぱいいるんだよっていうのを伝えたかったって。目的の一つ目は基礎スキルを身につける、二つ目が自己理解・他者理解・社会理解を深めて今後の学生生活や将来の充実に繋げるポイントは低学年対象ってところです。1、2年生なので、今後の学生生活は充実させたいですよね。さらにはその先にある大学を卒業した後も生活を充実させていけるような、「基礎力をこのPBL型の授業で少しでもヒントをつかもう」というのを大きな目的として置いてます。

授業全体を通して行なっていたのは「プレゼンテーションの計画と準備」でしたが、目的を達成するための「実施プロセス」を大切にしていたのでグランドルールを設けて取り組んでいました。「正解がない時代だから、いろいろ試して、そこから学んで、また試すことが、必要なスタンスだよね。」みたいな話をプロジェクトを通して都度都度インプットしていました。プレゼンテーションも正解不正解はなくて、自分たちで考えて行動することによって、自分たちが納得することがすごく大事という話も。

自分たちで考え行動して決めるっていうグランドルールだから、私達企画側も正解は持ってないから、決め事とか困ったらみんなに相談していました。

あきら:なるほど!これが全体感なんですね。最初の意識合わせはすごく大事ですね。ありがとうございます。

今回の授業を終えて

あきら:今回のPBL型授業の手応えを伺いたいです。実際昨年度やられてみてどうでしたか?

中田:はい。手応えはありました。学生の皆さんの表情もアクションも変わったし、非常に成長が見られたなっていうのが、振り返り終わっての率直な感想です。自分たちでどんどん試す・考える・行動する・決めるっていう、ここの部分が明らかに変わりました。

例えばチームでの話し合いも、最初の頃は言葉の量が少なかったんですが、後半になるにつれてわーっと話せていたし、意見もぱっと出るようになって決まり事もスムーズに決まってました。あとはユースリーダー協会様に1年生が1人でアポを取って取材に行くみたいなことが起こったり!その学生さんって最初はとても引っ込み思案だったんですけど、いろんな要素が重なってそういうことになってましたね。本人の中で何が変わったのか聞いてみたら、「物を選ぶときに考えるようになりました」って

アルバイトを選ぶ理由まで結構考えるようになったみたいで、頭使う系のアルバイトと、体使う系のアルバイトの2つを始めたんですけどって理由を明確に言語化していたんです。

ひなた:すごい成長ですね!

ひなた:学生の皆さんが後半に差し掛かるにつれて変わっていったきっかけは何だったのでしょうか?

中田:学生の中で大きく響いていたのは、悔しさでした。中間プレゼンの振り返りの中で、多くのチームが全然駄目だなと思って悔しさを感じていました。

ひなた:なるほど。

中田:そこから紆余曲折を経てですね、みんなの本気度が上がったんですよ。印象的だったんですけど、最終プレゼンが終わったときにも、みんながめっちゃ悔しがってたんです。悔しいっていうのは本気でやったからですよね。同時にお互い一生懸命やってるのが伝わってるから、悔しいんだけど、1位のチームに対してもリスペクトがすごく出てる場だったんです。そうやって本気になって自分たちで考えて取り組んだことは、成長や大きな充実感に繋がっていました。

ひなた:そうですね。どんな結果であれ、本気で取り組んだからこそ成長に繋がったんですね。

PBLの先にあるもの

中田:今回は基礎的な社会人のスキルを身につけようっていうことを1個の目標として掲げていたのですが、やっぱりその先にあるのは就活とかで生かせるようなものも目指していました。職員さんとは、就活をターゲットにする発想もそれはそれで良いと思うんだけど、「就活のためにやらなくても、いつのまにか就活を乗り越えられる力がついちゃう」みたいな感覚も大切にしたいって話してました。だから自分で考えて決めるスタンスが身について、それで2年間の大学生活を送っていけば、「就活のための〇〇力をつけるぞ!」って時にすでに基礎力ってもうあるものだと思うんですよね。

ひなた:そうですね。だからこそ1、2年生の低学年対象にやる価値がありますよね。

中田:そうですそうです。大学生活でそれを実践できるから、ものの見方とか行動の仕方が変わったら、雪だるま式にどんどん力がついていっちゃいますよね

ひなた:雪だるま式!良いですね!

中田:そうなんですよね。特に今回の企画は、職員さんの熱量がまず高かったんですよ。こういう企画をやりたいとずっと思っていて、温めてきて、それで何かできませんか?とご相談をいただいていたので、この話も何年も前から一緒にしてたんです。またその熱量が学生にも伝わってたし、キャリアフラッグの運営チームは当然エネルギーが高い人が多いので。

あきら:なるほど。

中田:何かを学ぶときに、コンテンツとプロセスってあるんですよね。例えば英語を学ぶっていうコンテンツがあるとして、その学ぶプロセスっていろいろあるじゃないすか。机に向かって学ぶプロセスもあるし、街に出て会話して覚えていくプロセスもあるし、そのコンテンツとプロセスを分けて考えたときに、今回はプロセスの熱量がめっちゃ高かったんです。何か素晴らしい知識・ノウハウみたいなのがあったとしても、それがどういうプロセスで伝わっていくのか、その中に熱量がどれぐらいあるのかが大切だなっていうのがやってみて感じていることですね。

あきら:そうですね。先生の熱量だったり、全体の雰囲気だったり。熱量が感じられないと、自分だけがやってもしょうがないと思ってしまうグループディスカッションは生まれやすいなと思います。だからこそ、それが伝わってくる授業は最高だと思います!

中田:そうなんですよね。最初はこの運営チームや講師から、学生に伝わるという流れが大きかったわけなんですけど、だんだん学生同士になっていくわけですよ。それが何かPBLの先にある話かもしれないですね。最初は受け取る側なんだけど、そばにいる人に影響を与えたり、エネルギーを伝えられるようになったり、さらにはそれがチーム全体からクラス全体に伝わる。自分の影響の輪を広げてくんですよね。

ひなた:理想的なPBLがどういうものなのか、何となくわかりました。授業は終わっても、その学生たちが何か持ち帰れていたら、その学生からまた熱がどこかに伝わって、いい影響やスキルが伝達し合うことが理想にあるのだなと思いました。それが自分たちのスキルとして当たり前のものになって、雪だるま式で大きなものになっていくのが理想なのかなと感じました。

今後のCFの展望について

あきら:ここまでは今回のPBLの概要をお伺いしたんですけど、今後はどういった形でPBLの授業を展開していくのか、気になっています。

中田:そうですね。今高校生が「探求」という授業をやっているんですよね。それを経験した世代が大学に上がってくるんですよ。探求ってまさにPBLなんですよね。ちょっとグループディスカッションやるっていう感覚だと、「こんなもんなのか」ってがっかりしちゃうかもしれませんね。

ひなた:なるほど。

中田:だからそういう意味では、本当にやってよかったねって思えるPBLが、必要となっていくんだろうな、と個人的には思いますし、私たちの授業・講座の立ち上げ経験をより活かせると良いなと考えています。

PBLをするにあたって

中田:今回のPBLは学内で初めての企画でした。学生が参加を検討できるように説明会は実施しましたが、初実施の未知の講座に参加を決めた学生はそれなりに意欲はあるっていう前提条件が揃ってたわけですよね。そうすると引っ込み思案だったとしても、場ができれば動いていく素地は歩いていど整っていてのだと思います。逆に一生懸命気持ちがある人でも、安心できる場じゃないと力を発揮できなかったりしますよね。その場のデザインを我々運営が創っていたのは、大事な要素でした。でも実社会ではそういったサポートもない状況の中で自分が頑張らなきゃないけない場面に置かれることも全然あり得ると思うんですよ。そうしたときに、頑張るのか逃げるのか、いろんな選択肢があるけれど、頑張ろうと思ったときに頑張れる力が身に付いた方がいいと思っています。それって、いきなりは出てこないですよね。

ひなた:そうですね。

中田:だからスモールステップとしてPBLでの最初は横の人と話す、それからグループと話す、クラス全体と話す、みたいに経験値を高めていくっていうのは多くの人にとって必要だと思います。

ひなた:そうですね。PBL型授業を受けるのであれば、最初のスタートラインはどこでもよくて、同じものを持ち帰る必要もなくて学生1人1人が何かを持ち帰るっていうことが大切だと思いました。

PBLを企画すること

ひなた:今回のように企業とか、他の団体と関わるプロジェクトベースのラーニングをするってなると、すごい時間がかかりそうですよね。

中田:かかりますね。企業・団体にご協力いただくにも、なぜこれに取り組むのかっていう、企業側のメリットを整理する必要があります。今回のユースリーダー協会様みたいに、学生向けにサービス提供していて、かつそれが学生・若者の成長を応援したい、という理念に基づいたものであるというのは、すごくマッチしたケースだと思います。ニーズがパチッとはまるところであれば協力してくださると思うんですけど、それを見つけるのがまず難しいですし、見つけたとしても時期やタイミングが全然合わないこともあります。

ひなた:そうですね。

中田:今回のユースリーダー協会の皆さんは、若者の教育・成長に気持ちがあるし、コミュニケーションも上手で良かったんですけど、必ずしも担当の方がそうじゃないケースもありえますからね。面白いですけど難しいですね。みんなにメリットがあって、マッチするところを探すのが大変です。

ひなた:そうなんですね。

中田だから仕事になるんですけどね。難しいからこそ私が形にしたら仕事になるんですよ。

ひなた:確かに!

振り返ってみてPBLの再定義

ひなた:PBLについて頭の中でふわふわしてたものが固まった感じがしました。

中田:PBLっていうのは目的があると思うんですよね。PBLやろうって言ったときに、こういう力が付いたらいいねとか、こういうスタンスで取り組めたらいいねっていうのが存在すると思います。

ひなた:確かに目的があって、それに向かうプロセスがあくまでPBLっていうだけで、手段に過ぎないですね。

中田:そうですね。いや動画でいいじゃん!みたいなケースも全然あると思うし。

ひなた:人と関わってこそ意義がある、得られるものがあるっていうのもありますよね。

中田:そうなんですよね。本当はあくまで手段の一つですもんね。

ひなた:そうですね、確かに落ち着きました。

あきら:何か手段の一つという意味でいうと、PBL型の授業に参加することで、自分がどういった立ち回りが得意なのかを知ることができると思います。自分は周りの人の先頭に立ってやることが得意なのかとか、アイディアしていろいろ意見を出すことが得意なのかとか。そういうのってやっぱり積み重ねていくことでわかると思うので、この手のことに使える手段でもあると思いますね。

中田:自分の振る舞い、出ますもんね。

ひなた:出ると思います!そういう場において、自分を突然客観視してこういうふうに立ち回るんだって気づく時があります。私の場合は中国に留学してもクラスの中で、班長のようなものになっていました。意識してるわけじゃないんですけど、やっぱり自分ってそうなんだって感じることがありますね。

中田:なるほどね。いや面白い話ですね。人と関わる場面で自分の振る舞いみたいなのが出て、それを見て自己理解が深まるみたいなね。

ひなたあきら:素敵なお話をありがとうございました!

今回の対談を通して

中田:提供側と受講側の考えていることは結構違うかもしれないという大きな気づきをもらいましたね。提供側からすると、企業とも接していたりすることから、「こういう力や考えを伝えられた方がいいよね」というのは考えているんですよね。でも、受講する側が、そもそも何をしていて何が響くのか、そっち側の気持ちをいかに言語化できるかというのは大切なことだと思いました。

ひなた:今回、PBLはあくまで一つの手段であり、何かの目的を提示した上でPBLというプロセスを通して、学生が何かしらのスキルを持ち帰っていくことがPBLにおいて大切なことで、学生が何かを得られれば、その先もきっと雪だるまのようにどんどんどんどん転がって大きくなっていくんだなっていうのがよく分かりました。

あきら:私は、PBL型の授業を受けた経験があるという状態で臨んだ今回の機会でした。やはり、前提として受けている人たちの意識によって成果が異なることを知りました。せっかく授業としてこういう場があったのに、それをうまく生かすことができなかった、ちゃんと成果として残らなかったのがちょっと残念だと感じました。