【キャリアとは越境】Vol.1 キャリアショックが人を成長させる鍵!

2023.02.27

COLUMN

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インターン生 ひなた

「キャリアは自分でどこまでやるか・これまでと違う環境で自身を試せるかどうか。キャリアカウンセリングも今のままで良いと褒めるだけ・共感するだけではだめで、どこかでチャレンジさせなければならない。そういう意味ではカウンセラーは人の越境力を育てることも大切。」

こう話していたのは、長く幅広い企業での経験を経て、現在はキャリア支援家・高校の社会科講師として多くの学生や社会人に教育の機会を与え続ける「武居 秀俊」さん。(講師紹介ページはこちら

武居さん、武居さんが以前ベトナム旅行で知り合った大学生の”好生さん”、インターン生の”陽向(ひなた)”の3人で食事に行った際に話していた内容から、今回の対談企画がスタートしました。

今回のテーマは「越境」

国境を超えることだけが越境ではありません。いつもと違う環境に行くことも、初めてのことに挑戦することも、失敗することも、一歩踏み出していれば全て越境です。

大学生である好生さんとインターン生陽向は、どちらも海外渡航などの越境体験を経験しており、学生こそ「越境する=自分の家を出て違う環境に行く」ことが大切だと身をもって感じています。

武居さんの「キャリアの観点からの越境の重要性」に大学生2人の「学生目線での越境体験の大切さ」を交えながら、幅広く越境について語り合っています✨

キャリア支援者・講師・学生・キャリアを築く全ての方に共通し、ぜひ読んでいただきたい内容です。

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いつの間にか自分を成長させていた?
Keyword「キャリアショック」

武居:まず皆さんに知っておいてほしいのが、キャリア理論でよく出てくる「キャリアショック」。何らかの理由でショックを受けたときに、人は考えるきっかけを持ちますよね。「こうやろうと思っていたけどその道が断たれた」とか。そんな時に、よく考え直して新たな道筋を考えていくことが多いです。あと、子供から大人になるタイミングとかも、自分が今まで当たり前だと思っていたことが当たり前じゃないと気づく瞬間とかも、ものすごく成長の機会になりますね。大雑把ですが、こういうターニングポイントになる機会のことをキャリアショックといったりします。

陽向:いつの間にか私もキャリアショックを受けて成長していた、ということもありそうですね。

武居:最近はSNSが広まりすぎてリアルな実感を持ちにくい、なんてことも言われていてキャリアショックを受けにくい、SNSの中の人が凄すぎてむしろ心が早く折れちゃうことも多いです。圧倒的な差のせいでキャリアショックが適切に機能しにくい環境とも言われています。

武居その環境下で、近年はレジリエンス(回復性)という言葉もよく言われていて、これは「何かうまくいかない事があってもそこから立ち直る力」のことで、人生うまくいかないことも多い訳ですから、これはすごく大切な力になります。で、そういう力をどうつけさせるかが大事。つまり、教育上は軽く失敗させること、ああ、思ったよりうまく進まないぞ、という体験が効果的なんですね。失敗させながらやっぱりこうだなああだなって考えながら進んでいってほしい。ずっとまっすぐ進むことはありえませんから。あとで自分が進んだ道を振り返った時に、ああ、そうか「これが自分のキャリアで通る道なんだ」って気づくわけです。

武居:これを私は高校や大学のキャリアの授業内で起こさせようと狙っていく訳です。例えば、何かの設定を与えてグループワークやセッションに挑んでもらいます。そこでの体験で思ったようにならないことで、ショックや環境を捉える力を育んでもらう。シチュエーションを与えて、今まで経験したことのない未知の体験を持ち込みます。そこでこれまで培ったものを使おうとするので、今まで自覚していなかった自身の力を引き出させるんです。だから授業では、いきなり「立ってください」「グループ組んでください」「グループワークでこれやってください」って言ってます。教室の中での自分の役割をロックされちゃうと、教育効果が減っちゃうのでこうやって揺らがせることを意識している訳です。こういう状況学習を通して、最初は戸惑っている受講者も繰り返しすぐに動けるようになっていきますね。


陽向:やったことのないことをやる時に本来の力が出る、ということですね。

武居そう。そこで本来の力が出ることはすごく多いので、こういった研修や授業をやることはすごく多いんだけど、そこでロックしちゃって、もう立てませんみたいな子も出てくるわけですよ。それも研修の一環で教育機会だからいいんだけど、そこからもう一歩踏み出してほしいですね。これも越境体験、授業は座ってるだけの時間ってところから本当は変えさせたい。

武居皆さんお分かりだと思うけど、旅はこれの連続なわけですよ。旅なんて思い通りに行かないじゃない。特にバックパッカーの1人旅行とか絶対そうでしょ?

好生はい、その通りです(笑)

武居越境体験豊富な人っていうのは、たとえば言葉が通じないのが当たり前だと知っているから、次の越境もしやすくなる。でも一度も海外に出たことのない人は、英語がうまく喋れるようになってから行こうとか考えるけど、それはすごく間違っていて、とにかく行っちゃえばなんとかなることが多いですね。越境することで、自身の力に気付いている、とでも言えば良いのかな。こういう非認知能力的な自信って大事ですよね。まあ、なんとかなるだろ的なやつ(笑)。

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現代社会で越境するために必要なことは?
Keyword「ウィークタイズ」


武居:
ということで、人は越境機会が成長機会になりやすいんだけど、でも今はそのハードルがすごく上がってきてるんじゃないかと思っている。

好生:確かに。

武居:夏にムスメとベトナム行って思ったことだけど、今はコロナの影響もあってすごく変わったと感じている。僕が大学生だった20年前との違いを大きく感じていて、日本という国が伸びていた時は、お金が余っていたからどんな大学生も海外へ行く子が多かったね。大学生になったら、合コンするのと同じように、ある一定数は海外行くのが当たり前だったし、英語喋れるかどうかは関係ないし、今みたいに国際教育自体がそんなに盛んではなかった

陽向逆に国際教育が盛んではなかったのですね。

武居:僕はそう認識してたから、大学生でも行く人は行くでしょうみたいな感じだった。でも今仮説として持っているのは、「国際性は大切」みたいな考えが進んだことによって、逆に普通の子は海外に出なくなっているんじゃないかなと。

陽向国際系じゃないから!

武居:そう。でも海外に行く事が大事ってワケじゃなくて、とにかく自分の環境から越境できる人が増えていけばいいだけなんだよね。

武居年代も趣味も違う人と話をする・そういった人との繋がりのことをウィークタイズ(ゆるやかな繋がり)っていうんだけど、弱い結びつきが沢山ある子の方がキャリアは成功しやすいと言われています。

好生くんと僕も本当にそうで、2022年の夏にハノイで会っただけで今ここに一緒にいる。ハノイで僕は「今はこういう子もいるんだな」と思い、好生くんからしても、「娘を連れてくる人いるんだ」みたいなことを思ったはず。旅人って結びつきで生きていく人だよね!ストロングタイズな特定の人としか付き合わないと世界が狭まってしまうけど、ウィークタイズな弱い結びつきが多くあるといろんな人とのやり取りでゆらぎが生じる。ああ、そうか自分ってこんなところに関心があるんだ。こんな話し方をするんだ、という気づきは得やすいですよね。


武居:
逆に、ストロングタイズな関係性だけで一つのコミュニティに定着して生きるのは、その中でしか生きていけないから変化に弱くなる。良く使われる例は高校生がトイレや何をする時も一緒の仲の子がいて、それ自体は悪いことではないんだけど、それ以外の人からすると話しにくくなってしまう、みたいな状況。キャリアの考え方に立つとこれを非常にか弱いと捉えられますよね。この会社の○○な部署でしか働けません!ということだから。
話を戻すと、何かと「越境できる」「レジリエンス体験が豊富にある」「プランドハプンスタンス(計画された偶然)」っていうけど、「予定通りにはいかないけど、むしろそれを面白いと思えること」これはキャリア的な成功に近づきます。今若者の内向き傾向が強い中で、この力を育むことが重要で、思い通りに行かない場、行かなくても良い場を与えて、主体的に自身と向き合う時間をつくる事が大切だと思う。

好生予定通りに行かないことの方が多いですもんね。

武居だから大きな意味ではカウンセリングかもしれないけど、僕の教育的な視点でいくと、学生の経験値が減ってきて、ミスが怖いからみんなチャレンジをしにくくなった中で、チャレンジをさせて何かしら越境させていくっていうことがすごく大事で。でもどうやってやったらいいんだろうね?国が伸びている時はみんなどんどん勝手に出てくと思うんですよ。でも、今は大多数の人が出にくい環境にあるようにも感じていて。お二人みたいに、海外などに出やすい環境にいる人はどんどん出ていくかも知れない、でも全く行かない子にも何らかで越境するようにしていかないと。

そこでヒントになるのは二人の越境体験だと感じているんだ。これをポジティブに捉えられれば、チャレンジする人も増えるかも知れない。

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「無駄な経験はないんだな」と感じました。成功も失敗も全ての経験が自分のキャリアに繋がると考えたら、より一層「今」を大切にして生きていこうと思いました。次回は大学生2人の越境エピソードについて深く掘り下げます!
どんな中高生時代を過ごし、今の大学生活に繋がっているのか必見です!次回もお楽しみに^^

執筆/インターン生ひなた