【授業で広がる”声の格差”とその打ち手】

2021.12.14

COLUMN

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谷口諭

友人とカフェに入ってお茶をした時のことです。

案内された4人席の間には、大きなアクリル板がありました。店内のガヤガヤもあり、話そうとしても声がとても聞こえづらかったのです。立って板の上から話しかけるのも変ですから、結局会話は減って、非言語のコミュニケーションが中心となってしまいました。その結果、ささっと食べてカフェを出ました。

このように、聞こえるようにするために声を張り上げないといけない時、口数は自然と少なくなってしまいます。

聞こえなかった時、相手に何回も言い直してもらうのはどうしても気が引けるので、数回すると聞こえてない時は笑顔を返すだけになるのは私だけではないと思います。

頑張って話さないといけない状況は、多くの人の口数を減らします。普段から声が小さかったり、日頃からコミュニケーションが苦手だったりする人であれば、その影響はさらに大きくなります。

コロナ禍になり、感染症対策として教室内でアクリル板を立てて授業をする大学も増えています。私が担当している授業でも、グループワークをするときにアクリル板を生徒の間に立ててもらっています。その結果、声が大きい人の発言数が増え、声が小さい人の発言が減る、”声の格差”が広がっていると感じています。

弊社が担当するキャリア関連科目の授業目的の1つは、社会人として求められるコミュニケーション能力の醸成です。就職活動でもグループディスカッションが取り入れられていることは多く、バランスのとれた参加姿勢が求められます。声の格差が広がることは、声の大きい人、小さい人、双方にとってバランスが取れていない状態を助長してしまう可能があります。

ここでは、声の小さい人がコミュニケ―ションに参加するきっかけを作る打ち手を取り上げたいと思います。

1つは可視化です。例えばグループディスカッションをする前に全員が自分の意見を考え、紙にマーカーで書く時間をとります。それをチーム全員に見える形で提示をするところからディスカッションを始めることによって、「自分の意見が反映された」という感覚を醸成し、コミュニケーションに参加する意欲を高めることができるかもしれません。

もう1つは講師による意見の取り上げです。声の小さい人の発言をグループ単位、またはクラス単位で共有することで、「自分の意見が評価されている」という感覚を醸成することができます。

これらの打ち手は声の小さい人を動機づけし、自己肯定感の向上を図ることで本人の努力を促すものとなっています。また、その他の参加者が、全員の意見を聞こうとし、全員をコミュニケーションの輪に取り込む意識を持つことも必要です。両方のアプローチをとることで、社会人として求められるコミュニケーションを知り、実践する場を創出することができます。

コロナ禍による授業への影響は実に多面的です。これまでの授業をそのまま実施した場合には、思わぬ結果をもたらす可能性もあります。その中には、上記のように予期できなかったものもあります。今後、コロナ感染対策の内容も社会情勢を踏まえて変化することも十分想定されますので、学内キャリア支援家として、一層授業運営における柔軟性、そして生徒の変化を感じ取る感受性が求められていると感じています。

キャリアフラッグとして、現場の変化を共有し、スタッフ一人一人が持つ引き出しを増やしていけるように一層努めてまいります。